【ご注意】この創作小説は『ToHeart』『雫』『痕』『こみっくパーティ』『WHITE ALBUM』『DR2ナイト雀鬼』『フィルスノーン〜光と刻〜』(Leaf製品)の世界及びキャラクターを片っ端から使用し、サンライズ作品『勇者王ガオガイガー』シリーズのパロディを行っております…って逆か<ヲ Leaf作品のネタバレも含みますのでご注意。
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東鳩王マルマイマー 最終章〈FINAL〉
第25話「命」(Bパートその1)
作:ARM
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(ルミラら雀鬼隊の映像と個人データが出る。Bパート開始)
「圧倒的なパワーを持つ〈クイーンJ〉といえども、所詮はオゾムパルス体。TH四号に取り込まれた同じオゾムパルスに直接撃ち抜かれて、ダメージを受けぬはずもない――オゾムパルス体を倒せるのは、同じオゾムパルス体である事を証明したか」
ワイズマンはビルの屋上から、上空で爆散するTH四号とエクストラヨークを見て、どこか可笑しそうな顔で言った。
「……あの様子だと、エクストラヨークのTHライドは新宿御苑に落ちたな」
「……やはり、死んでないと?」
その隣にいる柏木初音――いや、今はリネットが、不安げな顔で訊いた。
「あれが今のあの女の本体だ。あれを破壊せん事には斃した事にはならない」
「……京香さんが命をかけたというのに――まだ、あの女は血を望むのですか?」
泣き出しそうな声だった。
いや、泣いていた。
リネットは、敵であるはずの来栖川京香の死を哀しんでいた。
転生体である柏木初音であるかのように。
「あの女王か望むのは、この宇宙だ。――〈クイーンJ〉というエルクゥの女王たちの精神集合体。それは神を越えようとする妄執そのものなのだよ」
「妄執……」
「行くぞ、リネット。〈クイーンJ〉の元へ」
そう言うと、ワイズマンはビルから颯爽と飛び降りた。
リネットは暫し躊躇した後、その後を追った。
「と言う訳で、我が輩、新宿御苑に行かねばならぬのだが」
そう答えると、着流し姿の男は肩をすくめて見せる。
〈ザ・サート〉であった。
そして、その歩みを止めさせたのは、〈神狩り〉最強メンバーの二強、〈予知言〉伯斗龍二と、〈閃光の剣士〉ジーク・シュトロハイムその人であった。
「残念だが、貴様を行かせる訳には行かない」
ジークはゆっくりと愛刀のエクスカリバーを鞘から引き抜いた。幅広の両刃直剣は、日差しを受けて鈍く燦めき、朧のごとき剣気を纏っている。
凛とした青い瞳が穿かれた端正な相貌は、目前にいる悪しき存在を見据えていた。まさにこの時、彼は破邪の剣と化していた。
「今日こそ――いや、絶対にこの時、お前を屠る」
「おー、やだやだ」
〈ザ・サート〉は臆することなく、相変わらずおどけたように頭を振った。
「おー、やだやだ。〈クイーンJ〉に本気で勝てると思ってんだからこの人たち。フィルスソードが通じなかった時点で、人類には敗北が決まったも同然っしょ?」
「さて、な」
剣気を放つジークのその隣で、まるで正反対の如く、リラックスしている伯斗龍二は頭を掻きむしってみせる。
「……人を見限り、自らを人の敵であると定義したお前には、人の持つ底力など到底理解出来ないだろうよ」
「そう言うのを過大評価というのだよ」
〈ザ・サート〉は袖を口元に寄せて嫌らしそうに笑う。
「……まぁ、いい」
伯斗は肩をすくめた。
「どのみち、お前にはこの場で永遠にお引き取り願おう――ジーク!」
「応っ!」
伯斗とジークが同時に飛び出した。
しかし〈ザ・サート〉も同時に前へ飛び出た。
その手には、漆黒の反オゾムパルス粒子を湛え、周囲に滞留するオゾムパルスを対消滅させていた。
「我が〈ゼロの世界〉、とくと味わうが――――?!」
それは一瞬の出来事であった。
向かって左へ飛び出していたジークの姿が閃光と化し、〈ザ・サート〉の視界から消え失せたかと思ったその時、背後からそれは聞こえてきた。
「『閃光剣』――光速の一太刀」
「ぬ――」
慌てて翻す〈ザ・サート〉であったが、ジークの放つ光速の剣を交わしきる事など出来ず、一瞬にして右腕を肘の所から断たれるのが精一杯であった。
「さ、流石、最強の〈神狩り〉――――」
「もう一人いる事を忘れないでくれよ」
伯斗の声はジークの攻撃から飛び退いた右側から聞こえてきた。
無論、それは〈ザ・サート〉には想定の範囲内であり、既に右翼へ散布した〈ゼロの世界〉が、伯斗の攻撃を防いでいたはずだった。
だが、散布したはずの〈ゼロの世界〉は、そこには存在していなかった。
「あり得ない――いや、これは――」
「あり得る――“俺がそう変えた”」
伯斗はにやりと笑いながら、〈ザ・サート〉の頭部を右手で捉え、膝蹴りを浴びせた。
もんどりをうって地面に転がる〈ザ・サート〉。しかし直ぐに立ち上がり、出血が続く右腕を押さえながら飛び退いて二人から距離を取った。
「〈予知言〉! 確率そのものを任意で変化させて、世界そのものを予知した未来そのものへ変質させる能力! その力を持って様々な〈世界〉で、数々の神々と戦ってきた男の力――なんと恐ろしい!」
「それゆえに、お前が俺やジークとの対決を避け続けていた。――今度ばかりは逃しはせん」
そう言って伯斗は拳を握りしめ、〈ザ・サート〉に向ける。
「くわえて、貴様では決して追えぬ、私の〈閃光剣〉もある。もはや、貴様に勝機など無い」
ジークはエクスカリバーを〈ザ・サート〉に向けて言い放つ。
「……流石は〈神狩り〉二強、か。見事ですな」
〈ザ・サート〉は右腕の出血の所為でする青白い顔を向けて、感嘆するように喘ぎ喘ぎ言った。負け惜しみでなく、本気でその強さを讃えていた。
「ですが……我が輩を斃せるとは――?」
不意に、伯斗が空を指した。
「言っておくが、容赦はせん」
その伯斗の言葉を、〈ザ・サート〉は聞いていただろうか。
天を仰ぐその顔はみるみるうちに驚愕に変わり、慌ててその場から飛び退こうとする。
しかしその左足を、ジークの閃光剣が断ち、動きを封じてしまう。
「〈ザ・サート〉よ、貴様にはこれくらい派手な斃し方がお似合いだろう」
〈ザ・サート〉が地面に倒れた刹那、止めを刺さずその場から飛び退く伯斗は、口元に笑みを湛えながら言って見せた。
「隕石攻撃(メテオ・ストライク)だ」
人が隕石に当たる確率は何十億分の一と言われている。
その天文学的数値の仕事が稀に、日常を脅かしニュースになる場合もあるが、それでも隕石が当たるなど無縁の世界であろう。
その天文学的数値の確率を支配出来る者でもいない限りは。
銀河の深淵より飛来し、高熱と水蒸気を纏った、直径4メートルもあるその隕鉄の塊は、身動きの取れなくなった〈ザ・サート〉に命中して押し潰し、細胞の尽くを蒸発させた。
更に周囲200メートル内の建造物を衝撃波で粉砕し、巨大なクレーターを穿つ事となった。
* * * * * *
縦王子鶴彦。
陸上自衛隊第一空挺団特殊作戦群所属の三等陸尉。
ひょろっとしたその神経質そうな面差しからは、とても特殊部隊に所属する隊員とは思えないだろう。
その横に立つ、同じく陸上自衛隊第一空挺団特殊作戦群所属の三等陸尉である横蔵院蔕麿に至っては、所属する組織の名を聞いた者はみな、一様に更に目を疑うであろう。
その体重に不自由しない体型(やんわり表現)のどこに、国防の精鋭たる資格があろうか。何故彼らが、特殊部隊の、しかもMMM制圧部隊の任を受ける事が出来たのか。
縦と横に際立ったタチの悪い冗談は、MMM基地内にある情報管制区間の入り口で呆然と立っていた。
「暇でござるの」
縦王子(以下、タテ)が、ぽつり、ともらした。
「そ、そうだね」
横蔵院(以下、ヨコ)がどもりながら答えた。
「た、鷹橋二佐が奥に行ったきり、も、戻ってこないし、き、基地内は静かになっちゃうし」
「中にも外にも連絡が取れないというのも変でござるが――二佐から与えられた任務はここの死守。拙者らは任務を忠実に守るだけでござるよ」
そう言ってタテは大きく胸を張った。ヨコも釣られるように、マネをして胸を張るが倒れそうになり、慌てて止めた。
「横蔵院殿。お主は体型が丸いから、胸を張ったら重心が狂って危険でござるよ」
「う、うん、注意するよ――あれ?」
頷くヨコだが、その時、通路の向かい側からやってくる人影に気づき、慌てて肩に掛けていた小銃を構えた。
「だ、誰っ?!」
「なんとっ?! 拙者らの敵が現れたでござるかっ?! ――って、」
「きゃあっ!」
タテヨココンビは一斉に銃口を向けた。
まさかその先に、下着姿のうら若き女性が居たとは。
予想の斜め上を行く展開に、二人は顔を赤らめて固まってしまった。
「ななななな、なんと裸の婦女子となっ! 何と破廉恥なっ!」
「ちょ、ちょっと、何でそんな格好を?」
「助けてください! 後から変な人が追いかけて――」
半裸の逃亡者は二人の直ぐ手前で、その場にへたり込む。そして上目遣いに、涙に潤んだ目で二人をすがるように見つめた。
「「――変質者?」」
「……いきなり銃を構えて、あたしを押さえつけようとして……必死になってここまで逃げてきたんです」
「銃?」
「ほ、他の隊員かな?」
「と、とにかく、そんな刺激的な格好はほっとけまい。お嬢さん、これを」
タテは上着を脱ぎ、彼女の背に掛けた。
「あ、ありがとうございます」
「礼には及びませぬぞ。これも国民を守る我らが義務」
「じょ、女性に狼藉をはたらく奴らは許しちゃいけないんだな。で、で、どんなヤツだった?」
「顔は良くは――この通路の奥に居るはずです」
「そうでござるか?」
「どれどれ」
タテヨココンビは女性をかばうように、彼女が逃げてきた通路のほうへ一歩進んだ。
銃を構え、奥の方を注意深く見つめる二人は、その背後に立つ『敵』の存在には全く気づいていなかった。
そう、『敵』。――完全に無防備となったタテヨココンビの襟足へ、手刀の連撃が閃いた。一瞬の事に、タテヨココンビは何が起こったのか判らないままその場に崩れ落ち昏倒してしまった。
一瞬にして自衛官二人を伸した『敵』は、完全に伸びているその背に一瞥をくれ、やれやれ、と肩をすくめてみせた。
「……お二人さん、悪いね。この格好じゃちょい肌寒いし、銃も入り用だったからね」
保科智子は、タテから貰った上着の袖に腕を通しながら済まなそうに言った。
「……にしても、もう少し洗った方がええで……汗くっさぁ……」
智子は、他人の親切を踏みにじって入手した、襟元に染み込む酸っぱい臭いの染み込む襟を嗅ぎながら文句を言いつつ、続いてヨコのズボンとブーツを脱がして履いた。
「ノッポのほうは細すぎて尻が入りそうも無いとは言え……嫌な作業やなぁ……あ、お尻のサイズピッタリやん、ラッキー――ンな訳あるかいっ!」
ヨコの腰のサイズが自分と一致してしまった現実に、智子は一人ツッコミの後、暫し壁に手をつき激しい自己嫌悪に陥った。
「……あかんなぁ。これ終わったらもちっとダイエットに励まんとなぁ。――そんな事より」
裾と袖をまくり自分のサイズに合わせると、続いて倒れている二人から小銃とマガジン、そしてタテから防弾チョッキをはぎ取った。
「何か脱衣婆になった気分やなぁ。…………ま、あんたらもしかすると、ちょっとした地獄巡りになるかもしれんしな」
智子は、小銃を肩に掛けて、はぁ、とこれからの事を想像して嘆息する。
タテヨコが不相応な死守をしていた情報管制区間の入り口の先に、あの男が居るのだ。
「リュウ兄ぃを……止めなきゃ……ウチが止めなきゃ…………!」
大きく深呼吸をしてから唇を噛み、智子は改めて銃を構え直す。
ブーツが床を躊躇いなく蹴った。
入り口から智子の駆け足でちょうど20歩の所に、MMM基地の主要機器管制を司る情報中央室の入り口があった。
智子は、ここに鷹橋が居る事を確信していた。
何故ならここは、現在、テキィを除くマルチらTHライドを内蔵するメイドロボの全機能を停止させているプロテクトシステムを管理するコンピューターが設置されているからである。
智子は便所から出てきた後、基地内にいる自衛隊員の目をかいくぐりながら、無人の警備員室にあった外部モニタで、〈クイーンJ〉とキングヨークの対決を見守っていた。
その戦闘で、マルチたちが出動していない事、そしてメインオーダールームへ応答する回線が全て不能になっている事、更に、他で今と同じ手口で制圧した自衛隊員たちの話や、柳川から聞かされていた鷹橋龍二という男の情報全てを統合し、整理した結果、鷹橋がマルチたちを起動停止にして出撃させていないという結論に達した。
『ヤツは、メイドロボを憎んでいる』
それは柳川から直接聞いていた情報だった。
黙示の親友。亡き恋人の幻想に溺れた友を憂い、その死に泣いた男が、狂わせてしまったMMMという組織に決して好意的であるとは考えにくかった。柳川は当初から、MMMの作戦参謀であり、そしてもっとも彼に近しい存在である智子に直接、それらの情報を流し、警戒させていたのである。
智子は、鷹橋がそこまで浅はかな男だとは考えていなかった。
しかしその一方では、作戦参謀として一理あると考えていた。
いずれにせよ智子にとって、鷹橋はもっとも油断してはならない存在に変わりなかった。
私と公、その二つに挟まれていた智子だったが、最終的に彼女は後者を選んだ。
自分だけが鷹橋を理解し、彼に掛けられた疑惑を晴らす事が出来る。そう言い聞かせながら、智子は鷹橋に接していたのだ。
しかし、疑惑は結局、現実になってしまった。
智子は彼を押さえる事が出来なかった事を悔いていなかった。
不思議とショックは無かった。ああ、やっぱりな、とさえ思っていた。
あたしは冷たい人間になったんだなぁ、と思ったが、それに対して智子は自己嫌悪を抱く事はなかった。
今、自分が成す事をするだけ。それだけである。
ふと、智子の脳裏を、かつて留学先で目の当たりにした地獄絵図が過ぎった。
「……ウチは……あんな事を再びこの地上で起こさせないと誓ったあの日から、“鬼”になったんや……!」
自然と、小銃を握る手に力が籠もる。
殺してても、止めなければならない。
智子は扉の開放スイッチを押し、開いたが早いか室内に飛び込み、部屋の奥にある管制用コンソールへ銃口を向けた。
室内の配置は頭の中にあった。開かれたその室内には身を潜められるような調度は無い。先手を取った者が勝ちであった。
「鷹橋二佐、そこまでや!」
智子は一喝した。予想していたとはいえ、銃口の先には、鷹橋がコンソールに片手を付き、無言で佇んでいた。その姿には、この闖入者をまるで待っていたかのような余裕さえあった。
「やっと来たか」
その余裕の一端は、手にする拳銃が智子に向けられていた事もあったが、何より智子が問答無用で撃ってくるとは考えていなかった為だろう。
智子は、その余裕が少し癪だった。
「……リュウ兄ぃ……あんた…………」
「最終的にメイドロボを押さえておけば、この戦い、人類の敗北になる」
「あんたも人間やろがっ!」
「……俺は人間扱いされた事はない」
鷹橋は呟いた。
智子は声をつまらせた。
「…………俺はな、鬼の――ダリエリの転生体として、言いように弄られ、もてあそばれた。挙げ句、家族たちから疎まれ、絶縁されてしまった」
「…………知ってたよ」
「……」
智子の搾るような声に、鷹橋は溜息を吐いた。
「……柳川さんから全部聞かされてたよ。高校からずうっと家族と別れていたって」
「当然だろう。息子が実は化け物の生まれ変わりで、化け物みたいな力を持っていたら――まっとうな人間なら拒絶して当たり前だ」
鷹橋の脳裏に過ぎる光景。それはかつて隆山で、EI−01が暴れた時、同じくして市内に出現した鬼――柳川の他にも、鬼の血に目覚めて変化してしまった人間が存在していたのだ。
それは大昔、雨月山で暴れ回った鬼たちに凌辱された女たちが産み落とした鬼の子供達の血を引く末裔たちである。その殆どは絶えてしまったが、ごく僅かに遺伝子レベルで鬼=人類原種=エルクゥの情報が残ってしまい、EI−01の来襲に反応して覚醒してしまったのだ。
その鬼たちを次々と、僅か14歳の小僧が素手で皆殺しにした。
鬼を喰らう鬼。その異様な光景を目の当たりにして、果たして肉親はそれを自らの子供として受け入れられるものか。
少し賢しく、力に長けた以外は普通の少年だった。
しかし自衛隊を通じて〈神狩り〉に長男のその才を見出され、常時監視下に置かれた一家の心は、確実に歪み続けていた。
化け物。
母が、父が、弟が、自分たちを襲った悪鬼を屠った彼を、恐怖の面をもってそう罵った。
青ざめたその顔の記憶は、鷹橋の心を深く傷付くように刻まれた。
「――だからって!」
智子は悲鳴のような声を上げた。
「こんな事して良いワケあらへん!」
「感情ではない。これは必然の事だ」
そう言って鷹橋は引き金を引いた。
「何が必然――」
そこまで言って、智子の身体が後ろへ飛んだ。
飛ばされたと言っていい。背中から噴出した鮮血は、背後の扉に散り、その上に追うように智子の背が激突した。
「立たせていた二人の装備はフェイクだ」
これは罠であった。
Bパート(その2)へつづく
糸冬
2005/10/25(Tue)
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